Re:ゼロから始める異世界生活16 (MF文庫J)

WEB版と比べて細かい点（台詞や構成）での変更はあるものの、大幅に省略された部分は無いといって良い内容で、尚且短編集で扱われた内容も含まれて物語に膨らみが出ていて読み応えがありました。禁書庫の呪縛から解き放たれたベアトリスがスバルと仲睦まじく触れ合う姿が全編に亘って描かれる今巻は個人的に特に好きな巻です。気付いた点としてはペトラがエミリアのことをWEB版では「エミリア様」という呼び方をしていたのが、書籍版では「エミリア姉様」となっておりこの敬称の変更にはどんな意味が込められているのか思案中です。と申しますのも、ペトラはフレデリカのことも「フレデリカ姉様」と呼ぶので、これではエミリアとフレデリカが同格になってしまうのでいくら屋敷の仲間内同士の会話とはいえ王選候補者に対する敬称としてはどうなのかなぁ、と感じましたので。一の騎士であるスバルのことも「スバル兄様」とでも呼んでいればいいのですがそこはきっちり「スバル様」となっています。王選候補者の「一の騎士」のことは「兄様」と呼ばないのに、なぜ騎士より格上の王選候補者に対しては先輩メイドと同じ「姉様」という呼称をするのか？(特に深い意味はないのかもしれませんがなんか気になっちゃって（笑））冒頭でスバルが運動している場所についてWEB版では「アスレチックゾーン」という呼称のみでしたが、書籍版では「秘密訓練施設」という中二的な呼称も加えられています。(笑)WEB版ではスバルはプリステラでリリアナとキリタカと初めて出会った内容になっていますが（2014年9月当時）、その後に発表された短編集に於いてリリアナはロズワール邸に厄介になってスバル達とは既に知己となっており、そのリリアナを巡って生じた一連の騒動の主犯(笑)であるキリタカともその時に知った仲となっているのですが、書籍版ではそのことについて違和感なく自然に溶け込んだ内容になっており、「上手いなぁ」と思いました。また、スバルが自分の功績（白鯨、大罪主教討伐）のことでヴィルヘルムさんとユリウスに「褒め殺し」に遭うのはWEB版では諸陣営が顔合わせした当日になっていますが、書籍版では翌朝の朝食時に変更されています。（WEB版の時も思ったのですが朝食のメニューとして「ダイスキ焼（お好み焼き）」を食べるのはどうよ？、と思わないでもなかったですが、異世界でのお話ですし、その異世界に和風（ワフー）文化が存在していることを知らしめるエピソードなのだから今では「有り」と受け止めております（笑））一つの物語をWEB版と書籍版の両方で楽しめる作品を提供して下さる長月先生はやはり凄いなぁ、と改めて思いました。WEB版もここのところほぼ週一のペースで更新されており（直近では4月1日のエイプリルフール企画『ゼロカラオボレルイセカイセイカツ』）、長月先生の旺盛な執筆活動には頭が下がります。長月先生の益々のご活躍とご健勝を祈念申し上げます。