資本主義世界経済1—中核と周辺の不平等

一般にウォーラーステインの主著は『史的システムとしての資本主義』及び『近代世界システム』三部作（予定では四部作）であろう（これらには山下範久による「あっと」誌上を含めた的確な解説がある）。ただし、柄谷行人『トランスクリティーク』で触れられていたラテンアメリカにおける「封建論争」を考慮すると、本書"The capitalist world-economy"（特に中国が具体例として出される第１章「世界資本主義システムの勃興と将来における死滅"Rise and future demise of the capitalist system"」及びアフリカが具体例として出される第４章「相互依存世界における従属"Dependence in an interdependent world"」）は重要な著作になる。柘植書房のフランクやアミンの著作を読んでいないと全体像はわかりにくいが、本書は論争（ラテンアメリカは封建的か資本主義的か？）を整理しようとしてさらなる論争（脱ヨーロッパ中心主義は可能か？）を招いた臨界点にあるような気がする。論争において結論が導かれることはないが（22頁「資本主義は最初から世界経済の問題であって国民国家の問題ではない」がウォーラーステインによる結論であり前提だが）、システム論の欠点が自分が超越的なポジションにあるのように記述してしまうことだとすると、本書にそうした自分を棚に上げる行為を許さない緊張感がある。正直、ウォーラーステインの魅力はブローデルの歴史家としての魅力には劣ると思うのだが、本書は数少ない例外のような気がしてならない。